<もはやなにも残されていなくても>

<もはやなにも残されていなくても>

そのとき、ある思いがわたしを貫いた。
何人もの思想家がその生涯のはてにたどり着いた真実、
何人もの詩人がうたいあげた真実が、
生まれてはじめて骨身にしみたのだ。

愛は人が人として到達できる究極にして最高のものだ、という真実。

人は、この世にもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれるということを、わたしは理解したのだ。

(夜と霧より)

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